メッキ品も再生できる?ある中小企業のリサイクル技術に注目してみた

ビジネス

はじめまして。フリーランスで環境ジャーナリストをしている藤原和也です。
以前は大手素材メーカーの樹脂製品企画開発部門に7年間在籍していました。
退職後は「環境とビジネスの接点」をテーマに、リサイクルや資源循環の現場を取材して回っています。

メーカー時代、工場の廃棄物処理担当者とこんなやり取りをしたことがあります。
「このメッキ品、リサイクルに回せないの?」「無理ですね。金属と樹脂が一体化しているので、分離できないんですよ」。
インサート成型品やスーパーエンプラも同じでした。
「リサイクルできない素材」として、毎月何トンもの廃プラスチックが焼却処分に回されていく。
それを横目に見ながら、「まあ仕方ないか」と納得するしかなかった記憶があります。

ところが最近、50種類以上の樹脂を再生処理できるという中小企業の存在を知りました。
メッキ品もインサート成型品もスーパーエンプラも対応可能だというのです。
素材メーカー出身の私からすると、最初は正直「本当に?」と疑いました。

しかし調べていくうちに、その技術的な裏付けと実績が本物であることがわかってきました。
日本のプラスチックリサイクルは今、大きな転換点を迎えています。

この記事では、プラスチックリサイクルの「限界」とされてきた領域に切り込む技術と、それを実現している企業の取り組みを掘り下げていきます。
素材メーカーで働いた経験を持つ私の視点から、なるべく具体的にお伝えします。

プラスチックリサイクルの意外な「限界」

有効利用率89%の内訳を見てほしい

「日本のプラスチックリサイクルは進んでいる」。
この認識は、半分正しくて半分間違っています。

一般社団法人プラスチック循環利用協会が公表した2023年のマテリアルフロー図によると、日本の廃プラスチック総排出量は769万トン。
有効利用率は89%に達しています。
数字だけ見れば、かなり優秀です。

ただし、内訳を見ると景色が一変します。

リサイクル方法割合内容
サーマルリサイクル64%燃やして熱エネルギーを回収
マテリアルリサイクル22%素材として再利用
ケミカルリサイクル3%化学原料に戻して再利用

全体の約3分の2を占めるサーマルリサイクルは、平たく言えば「燃やして熱を回収する」方法です。
日本では「リサイクル」に分類されていますが、国際的には焼却によるエネルギー回収にすぎず、真のリサイクルとは見なされないケースが多い。

EU諸国ではマテリアルリサイクルとケミカルリサイクルの合計が35%前後、韓国ではマテリアルリサイクルだけで65%前後に達しています。
日本のマテリアルリサイクル比率22%という数字は、国際的に見ると決して高くありません。

マテリアルリサイクルが苦手とする素材たち

では、なぜマテリアルリサイクルの比率がこれほど低いのか。
理由のひとつは、「リサイクルできる素材に厳しい条件がある」ことです。

三井化学のサステナビリティサイトに掲載されている解説(マテリアルリサイクルとは?)でも指摘されている通り、マテリアルリサイクルの基本条件は「単一素材であること」。
複数の樹脂が混在していたり、金属やガラスなどの異物が混入していたりすると、品質の高い再生原料を作れません。

特に以下のような素材は、業界内で「リサイクル不可」とされてきました。

  • メッキ品:樹脂表面に金属コーティングが施されており、分離が困難
  • インサート成型品:ネジやピンなどの金属部品が樹脂内部に埋め込まれている
  • スーパーエンプラ:耐熱性・耐薬品性が極めて高く、分解・再生の技術的ハードルが大きい

私がメーカーにいた頃、こうした素材は例外なく焼却処分でした。
自動車のエンブレムや家電製品の装飾パーツ、精密機器の筐体。
製造現場から毎日のように出てくるのに、リサイクルの選択肢がない。
「コスト的にも技術的にも無理だから」と、誰もそこに疑問を持たなかったのが実情です。

さらに厄介なのは、スーパーエンプラの存在です。
ポリスルホンやポリエーテルエーテルケトンなど、耐熱性や耐薬品性に優れたスーパーエンプラは、医療機器や航空宇宙分野で使われる高性能素材。
化学的に安定しすぎているがゆえに、通常の温度や薬品では分解できない。
産業技術総合研究所がスーパーエンプラの分解技術を開発したというニュースが話題になったのも、それほどこの分野のリサイクルが難しかったことの裏返しです。

メッキ品・複合素材を再生する技術の正体

なぜメッキ品のリサイクルは「不可能」と言われてきたのか

メッキ品のリサイクルが特に難しい理由を、もう少し詳しく説明しておきます。

プラスチック製品に施されるメッキは、一般的にABS樹脂などの表面にクロムや銅、ニッケルといった金属を何層にも重ねて形成されます。
このメッキ層は樹脂と非常に強固に密着しており、物理的に「剥がす」ことができません。

そのまま粉砕すると、微細な金属片が樹脂に混入します。
混入した金属片は再生原料の品質を著しく低下させるため、製品に使えるレベルの原料になりません。

「じゃあメッキだけ溶かせばいいのでは?」と思うかもしれませんが、金属を溶解する薬品は樹脂も侵してしまう。
樹脂の種類ごとに耐薬品性が異なるため、一律の処理では対応できません。

インサート成型品にも似た問題があります。
金属部品が樹脂の内部に完全に埋め込まれているため、外側から確認すらできないケースも多い。
粉砕してから金属を除去しようとしても、微細な金属片の完全除去はきわめて困難です。

加えて、メッキに使われる金属の種類も一様ではありません。
クロム、ニッケル、銅、亜鉛。
メッキの構成によって最適な処理方法が変わるため、画一的な工程では対応できないのです。

こうした事情が重なり、「手間とコストをかけても品質の高い再生原料が得られないなら、焼却の方が合理的」という判断が業界の常識になっていました。

50種類以上の樹脂を識別・再生するプロセス

この常識を覆しているのが、群馬県太田市に拠点を置く日本保利化成株式会社です。

同社が手がけるのは、廃プラスチックのマテリアルリサイクルを通じた合成樹脂の再生・販売事業。
注目すべきは、その対応範囲の広さにあります。

ポリエチレンやポリプロピレンといった汎用プラスチックはもちろん、エンジニアリングプラスチック、さらにはスーパーエンプラまで。
しかもメッキ品やインサート成型品といった、従来リサイクルが困難とされてきた複合素材にも対応しています。

同社のプロセスは「一括相談・高精度鑑定・適正再資源化」のワンストップ型です。
排出事業者から持ち込まれた廃プラスチックを、まず高精度な鑑定技術で樹脂の種類を特定する。
その上で、樹脂ごとの特性に合わせた最適な再生処理を施します。

50種類以上の樹脂を識別できるという点は、素材畑の人間から見ると驚異的です。
樹脂は種類によって融点が100℃台から300℃超までバラバラ。
耐薬品性、結晶性、流動性も異なります。
一律の温度や条件で処理すれば、ある樹脂には最適でも別の樹脂は劣化する。

つまり50種類以上に対応するということは、それだけの樹脂の特性データと処理ノウハウを蓄積しているということ。
この知見の厚みこそが、同社の技術力の核だと私は見ています。

排出事業者にとってもメリットは大きい。
「この廃材はリサイクルできるのか、できないのか」を自社で判断するのは難しいですが、ワンストップで相談から再資源化まで対応してもらえるなら、余計な手間が省けます。
廃棄物を「捨てるもの」ではなく「生かせるもの」として捉え直す。
そのきっかけを作れるのが、こうした専門企業の価値です。

「捨てる」から「生かす」へ転換する企業たち

GRS認証取得が証明するもの

技術力だけでなく、品質管理体制の面でも注目したい動きがあります。
日本保利化成株式会社は2025年4月にGRS(Global Recycle Standard)認証を取得しました。

GRS認証は、環境省の環境ラベル等データベースにも掲載されている国際的なリサイクル認証基準です。
アメリカの非営利団体テキスタイル・エクスチェンジが運営しており、東レや旭化成、伊藤忠といった大手企業も取得している信頼性の高い認証です。

認証取得の要件は、単に「リサイクル素材を使っている」だけでは足りません。

  • 製品に含まれるリサイクル成分が50%以上であること
  • サプライチェーン全体でのトレーサビリティが確保されていること
  • 化学物質管理が適切に行われていること
  • 労働環境の適正性が審査基準を満たしていること

さらに、認証取得後も年1回の監査が義務づけられています。
一度取って終わりではなく、継続的に基準を満たし続ける必要がある。

中小企業がこの認証を保有しているのは、「うちのリサイクル品質は国際基準で検証済みです」と客観的に証明できるということです。
再生原料の調達先を探すメーカーにとって、品質の裏付けがあるのは大きな安心材料になります。

SDGs経営の中身を見る

リサイクル技術や品質認証だけでなく、企業としてのSDGs経営にも目を向けたい。

日本保利化成株式会社の場合、3つの柱で取り組みを進めています。

ひとつ目は環境負荷低減。
CO₂排出量の可視化、省エネ設備の導入、再生可能エネルギーの活用。
リサイクル事業そのものが環境貢献ですが、事業運営自体の環境負荷も下げようという姿勢です。

ふたつ目はダイバーシティ経営。
国籍・年齢・性別を問わない採用、多言語対応の職場環境整備、健康経営優良法人の取得。
群馬県太田市は外国人住民の比率が高い地域でもあり、地域特性を活かした経営と言えます。

みっつ目は地域社会への貢献。
地域団体への加入や寄付、近隣の清掃活動。
「SDGs」を掲げる企業は増えましたが、具体的に何をやっているのか見えにくいケースも少なくありません。
同社の場合、活動内容がかなり具体的で、形だけのラベルではないことが伝わってきます。

詳しくは日本保利化成株式会社のSDGs経営について紹介した記事をご覧ください。
環境・社会・地域の3つの軸でどんな活動をしているか、丁寧にまとめられています。

サーキュラーエコノミーの実現に中小企業が必要な理由

プラスチック資源循環促進法が企業に求めるもの

2022年4月に施行されたプラスチック資源循環促進法。
製造業にとって、この法律は無視できない存在になりつつあります。

同法では、プラスチック製品の設計段階からリサイクルを意識すること、使用量の削減、自主的な回収・再資源化が求められています。
現時点では多くが努力義務にとどまっていますが、環境規制が年々強化される世界的な潮流を考えると、いずれ義務化が進む可能性は高い。

特に製造業の排出事業者にとって、「工場から出る廃プラをどう処理するか」は経営課題です。
焼却処分のコストは上昇傾向にあり、CO₂排出量の削減目標を掲げる企業にとっては「燃やす」こと自体がリスクになりかねません。

これまで「リサイクルできないから焼却」で済んでいた素材に、マテリアルリサイクルの選択肢が生まれること。
それは排出事業者にとって、コスト改善と環境対応の両面でメリットがあります。

たとえばメッキ品やインサート成型品を年間数十トン排出している工場にとって、焼却費用の削減効果は無視できません。
加えて、「廃棄物を再資源化している」という実績は、取引先や消費者への環境アピールにもなります。

環境配慮型素材の安定調達という課題

一方、再生原料を使いたいメーカー側にも悩みがあります。
「再生プラスチックを製品に採用したいが、品質が安定しない」という声は、私の取材でも頻繁に耳にします。

リサイクル原料はバージン材(新品原料)と比べて、色味や強度にばらつきが出やすい。
特にエンプラやスーパーエンプラの分野では、そもそも再生原料を供給できる事業者が限られていました。

50種類以上の樹脂に対応でき、GRS認証で品質管理体制が国際基準で担保されているリサイクラーの存在は、メーカーにとって貴重です。
廃棄物を「流動的資産」に転換するという発想は、排出事業者とメーカーの双方にとって利益をもたらすモデルと言えます。

大手リサイクラーだけに頼る構造では、地域ごとの多様な廃棄物に対応しきれません。
中小企業が専門的な技術と国際的な品質基準を持ち、地域の製造業と密接に連携すること。
ここに、日本のサーキュラーエコノミーを前に進める鍵があると私は考えています。

メーカー時代、「リサイクルは大手がやるもの」と漠然と思っていました。
でも実際に取材を重ねてみると、地域の製造業と直接つながり、きめ細かく対応できるのは中小のリサイクラーです。
大手には大手の役割がありますが、現場に近い中小企業が「次の一手」を持っているケースは思った以上に多い。
そのことを、今回の取材で改めて実感しました。

まとめ

メッキ品、インサート成型品、スーパーエンプラ。
かつて「リサイクルできない」と片付けられていた素材に、マテリアルリサイクルの道が開かれつつあります。

日本の廃プラスチック有効利用率89%という数字の裏には、サーマルリサイクルが64%を占める現実があります。
マテリアルリサイクルの比率を引き上げるためには、「リサイクルできる素材の幅」を広げる技術が欠かせません。

今回注目した群馬の中小企業のように、幅広い樹脂に対応し、国際認証で品質を証明できるリサイクラーが増えていくこと。
それが、資源が循環する社会の実現に向けた地に足のついた一歩です。

「リサイクルできないから仕方ない」。
メーカー時代に何度もそう口にしてきた私自身にとって、こうした企業の存在は希望であり、同時に反省の材料でもあります。
技術は進歩している。問題は、その情報がまだ十分に届いていないこと。

私も引き続き、こうした現場の技術と挑戦を追いかけていきます。

タイトルとURLをコピーしました